町屋を投影 - 風を通り抜けるライトウェルを抱く都市住宅
築地の家
築地場外市場の中高層ビルに囲まれ、間口に対して奥に長いL形の敷地での新築計画。
前面道路は日の出前から仲買人や買い物客・外国人観光客が行き交う賑やかな通りなので、夕方に限定される少ない搬入回数で大型重機を必要としない施工が求められる地域である。地区計画で最低容積率200%の制約があり、3階建以上の建物がひしめき合っている。
戦前よりこの地で代々商いを営む施主の依頼は、職住近接とした店舗付住宅であった。未明から働く両親と息子たちにはそれぞれの時間を過ごす個室を用意する一方、家族が集えるリビングを中心とした繋がりを重視し、明るく風の通りが良く外部からのプライバシーを守る住まいとした。
奥に長い敷地の以前の住宅で問題になっていた光と通風の不足を克服するため、当計画では、通り庭を備えた
町家の造りを2階レベルに投影することを考えた。2階にライトウェルを設け、そこへ前面道路から店舗事務室の
バルコニーを介して風を引き込んだ。さらにL字入隅に大型開口部を設けオープン階段を通して2・3階の中心部にも陽差しと涼風を導いた。3階セットバック部の2つのテラスは日照時間を長くすることに貢献したほか、高さが調整されたパラペットやそで壁により近隣上階からの視線をカットしプライバシーが確保された開放的なリビングとなった。室内の多くは引戸で仕切り、リビングと対面する子供部屋とはガラスのレイヤーが適度な距離感を与える。鉄骨構造は910モジュールで小断面軽量化、運搬車・重機を減らし建設に掛かるCO2削減も目指した。なお、2階は1LDKSに転換して2世帯住宅にコンバージョンできるようPS・構造壁の位置が予め配慮されている。
所在地:東京都中央区築地
構造:鉄骨造
規模:地上3階
延べ床面積:319.28㎡(1階 116.45㎡/2階 108.01㎡/3階 94.82㎡)
工事種別:新築
完成年月:2013年6月
用途:店舗併用住宅