OXYMORON やわらかい洗面ボウルがもたらす変調
BOING東京ショールーム
【はじめに】
クライアントの灰一株式会社は、スペインのボーイングと提携した日本唯一の販売代理店。ウレタンを成型した弾力性があるボウルは今までにないユニークな商品で、日本市場へ向けて灰一から発表されると、子供向けの施設を企画するデザイナーをはじめ多方面から反響を獲得、ショールームを開設することとなった。
【コンセプト】
洗面ボウルは陶器製で硬い・白いという常識を覆し、やわらかい洗面ボウル・カラフル洗面ボウルという一種矛盾する言葉で表現する「撞着語法[OXYMORON]」を用いて言い表すこの商品からインテリア要素の着想を得え、随所に散りばめることとした。
【 ショールーム 】
リノベーションが完了された天井・照明器具・水回りの設えを壊すことなく、必要なものを増設する手法で資源を無駄にしないことを念頭においた。展示のみならず「デザイナーを招いてレクチャーやパーティーを行い、集えるショールームを」という要望に対して、長さ7mのカウンターが文字通り様々なシーンで中心となるよう、中央に配置する平面計画とした。小さなエントランスホールは、来訪者の視覚を色彩的にリセットするための前室の機能を持つ、真っ白な空間として用意されている。
モノトーンで構成された室内にカラフルでオブジェのような商品が浮遊する展示空間。ウレタン製で柔らかく10色×4種の個性的なフォルムのボウルを引き立てるように、インテリアを構成する仕上げには硬質かつ重厚なマテリアルを厳選し、視覚的コントラストや触覚的ギャップを強調・表現した。
コンクリートカウンターは薄いエキスパンドメタルで支え「軽いコンクリート」を演出。周囲のガラスは、外の表参道の景色や空間の区切りが曖昧になるよう視線をコントロールするエレメントとしてレイアウトした。
撞着性エレメント
やわらかい洗面ボウル
カラフルな洗面ボウル
軽いコンクリート板
視線の通らないガラス
脚のないカウンターテーブル
不安定なハイチェア
対義性エレメント
カラフルな商品:モノトーンの空間
柔らかいウレタン:硬いコンクリート・スチール・ガラス
温かみのあるウレタン:冷たいコンクリート・スチール・ガラス
軽いウレタン:重いコンクリート・スチール・ガラス
汚れがつかないウレタン:汚れ傷んだコンクリート
【 照 明 】
リノベーションされた真新しいビルの既存天井照明を廃棄することなく、カウンター照明・壁面照明など新たな照明計画に組み入れた。またフィリップス製hueのLEDペンダントをカウンターを挟んで配列したことが空間の特徴にもなっている。26個のランプは、スマートフォンからそれぞれ個別に色相をコントロールでき、洗面ボウルの色彩に合わせた色に発光させるなどし、非日常的な色彩で毎シーズン開催するパーティーを彩る。
【 NeoGRCによるコンクリート板の表現 】
長さ7mのコンクリート板は搬入すら困難であるため、常温硬化型ガラス繊維補強セラミックでコンクリートの代用を試みた。深さ90mmの簡易型枠に粘度のあるセラミックを厚さ10mmで塗りつけ硬化させた。よりコンクリートの表情をつくるため樹脂性ビーズを混入させ、硬化後に溶剤で溶かし去ることで表面にコンクリート特有の気泡を作り出した。仕上げにエイジング塗装を施し、エッジの欠けをそのまま活かすことで重厚なコンクリートを再現した。
所在地:東京都渋谷区
床面積:98.8㎡
クライアント:灰一株式会社
インテリアデザイン:スチルソリッド 須藤慶一
ライティングプラン:EOS plus 高橋翔
構造設計:エスフォルム 大内彰
施工:アカンプリッシュ 高橋淳、北山さくら
デコレーション:内藤桃子
プロモーション:ディコンセプトデザインオフィス 竹村尚久
工事種別:リノベーション
完成年月:2014年10月
用途:展示ショールーム・オフィス
撮影:ナカサ&パートナーズ 高野二郎
イベント撮影:スチルソリッド 須藤慶一